高温環境下における4H-SiC結晶中の積層欠陥拡大の放射光X線トポグラフィーによるその場観察

2019年9月29日~10月4日開催の「ICSCRM 2019(※)」でも発表をした、
「高温環境下における4H-SiC結晶中の積層欠陥拡大の放射光X線トポグラフィーによるその場観察」について藤榮文博さん(D2)の研究内容をご紹介します。

1. はじめに
電気自動車やエアコンなどには、電力を変換するためにパワーデバイスという半導体が使われています。
現在、よく使われているパワーデバイスは、Si(シリコン)の素材でできたものがほとんど。
しかし、パワーデバイスをつくる素材としてSiよりもSiC(シリコンカーバイド)の方が優れていることが明らかにされており、
その理由は、SiCはSiよりも電気を通しやすく、電力損失が発生しにくいからです。
また、SiCは熱伝導率が高く、熱しやすく冷めやすい特徴があるので、
熱がこもりやすいSiのデバイスには不可欠である冷却装置が、SiCのデバイスには必要ない分、デバイスを小型化することができます。

2. 研究の背景
現在、既にSiCのパワーデバイスが使われるようになってきているのですが、
今世の中に出ているSiCのパワーデバイスは、SiCの結晶の中に欠陥が多いのが事実です。
結晶中の欠陥が少なくなるほど、エネルギー損失を減らせるので、省エネにも繋がります。
欠陥ができる要因は様々にあり、欠陥をなくすことはとても難しいことですが、
宇治原研究室では、できるだけ欠陥のない綺麗な結晶を作ろうと取り組んでいます。

3. 半導体に電気を流すために
SiやSiCなどの半導体は、そのままでは電気を流しません。
「電気が流れる」ということは、「電子が動き回っている状態」ということですが、
半導体の場合、電子の数が安定していて電子が動こうとしないため、そのままで電気が流れることはありません。
半導体を電気を流す性質に変えるために、わざと窒素やリンなどを入れます。
そうすると、電子が動く状態に変化するのです。

4. 研究について
SiCの結晶を育成したりデバイスを作成するときには、その工程で1000度以上の高温にさらされる場面があります。
この研究では、このような高温下で結晶内部の欠陥がどのような挙動を示すのかを調べています。
欠陥の挙動を明らかにすることは、欠陥をなくす対策をとる上でとても重要です。

実際、実験において、電気を流しやすくするために結晶に窒素を入れたSiCでは、
高温で結晶中に電気を流しにくい領域(積層欠陥)がうまれ、広がる現象が観察されます。

今までの研究では、結晶中の窒素の濃度が高いほど、積層欠陥が広がりやすいことが分かっていたのですが、
今回の研究で結晶中に窒素が入っていても積層欠陥が広がりにくい条件があることが明らかになりました。


(▲高温環境での実験中。結晶の挙動を撮影をする藤榮さん。)

▼専門のみなさんへ
「高温環境下における4H-SiC結晶中の積層欠陥拡大の放射光X線トポグラフィーによるその場観察」については、下記をご覧ください。

F. Fujie, S. Harada, H. Koizumi, K. Murayama, K. Hanada, M. Tagawa, T. Ujihara
“Direct observation of stacking fault shrinkage in 4H-SiC at high temperatures by in-situ X-ray topography using monochromatic synchrotron radiation”,
Appl. Phys. Lett, 113, (2018), 012101.
https://doi.org/10.1063/1.5038189

4H-SiCは次世代パワーデバイス用材料として期待されています。
低抵抗n形SiC基板を得るには高濃度の窒素添加がなされるが、それにより高温環境下において積層欠陥が形成・拡大することが報告されています。
拡大する速度が温度と窒素によって変わることが示唆されているが、従来の手法では、高温での挙動は明らかになっていません。
実際の高温環境での詳細な挙動を正確に知るためにその場観察を行いました。

※ICSCRMは、炭化ケイ素(SiC)およびその他のワイドバンドギャップ(WBG)半導体のすべての分野で技術的な議論を行うための主要なフォーラムです。
世界をリードする科学者、著名な専門家、経験豊富なエンジニア、および世界中のWBG半導体のさまざまな分野で働く若い学生を集め、上記の分野における科学的および技術的進歩の両方を報告および議論します。