国産技術で作る 次世代に活躍するSiC

SiC(シリコンカーバイド)は運輸、製造、民生などあらゆる分野で燃費向上、低エネルギー損失を実現できる、大注目の次世代パワーデバイスの基幹材料です。我々は様々な視点からSiCの溶液成長法にアプローチし国産技術の実現を目指しています。

1.はじめに

次世代と言われるIoTや5Gの社会に不可欠な、革新的な省エネルギーを実現させる、パワーデバイス基板の原料となるSiC単結晶は、一般に昇華再結晶法という極めて温度が高くuncontrolable(制御が難しい)な環境で他国で育成されます。一方、我々も含め日本国内では、産官学が協力して「溶液成長法」という新しい育成技術を研究開発してきました。溶液成長法は液体を介して結晶が成長するため、昇華再結晶法よりも安定して高品質な結晶育成が期待できます。

また、現状主に使用されているのはSi(ケイ素)ですが、研究を進めているSiCの(絶縁破壊電界)強度や扱える電圧はSiの10倍以上で、トランジスタ(電子回路において、信号を増幅させたりスイッチングすることができる半導体素子)に使うと、使用する電力量を10%程減らすことができます。

※IoT=Internet of Thingsの略。直訳すれば「物のインターネット」となりますが、パソコン類以外の「物」が、センサーと通信機能を持ってインターネットにつながること。それにより、人間が遠く離れた「物」の様子を知ることが可能になり、さらに「物」をコントロールすることにより、より安全で快適な生活が可能になります。
 
※5G=通信システム(インフラ)と携帯端末の両方を、根幹からそっくり入れ替え、大幅な通信速度向上を実現する節目とその仕組みを“世代”(Generation)と呼んでいます。現在日本で主流なのは第四世代、いわゆる「4G」ですが、IoT社会が進み、自動運転や遠隔手術、8K映像の伝送など、「遅れることなく、正確に、同時に多数、大容量の情報を伝達する」ことを可能にする、2020年の開始を目指している通信システムのこと。
 
※パワーデバイス=電力を発電、送電、送電する際の、電圧・周波数変換やモーター制御などに用いられる半導体素子。発送電、変電所、電車、ハイブリッド車、電気自動車、家電製品、工場など多岐にわたる。
 

 

2.研究背景

日本は世界屈指のパワーデバイス製造技術を有していますが、基板(基板の原料となるSiC単結晶)の供給は他国に依存している状態です。産業としては、一貫して国産技術で行いたいということは重要で切なる願いでもあります。

また、地球温暖化に歯止めをかけるためにも、電力消費量を抑えること、エネルギーロス(発熱)を抑えることのできる材料開発は急務です。

 

3.きれいで大きく厚いSiC結晶の研究

宇治原研究室では、革新的な省エネルギーを実現させるため、使用電力が大きかったり、電圧の負荷が大きいパワーデバイスに使用するのに適した、きれいで(お肌のキメが整っているイメージ)大きく厚いSiC結晶、つまりキメが整ってツルンとしたSiC結晶を大きく厚く作る方法の確立に向け、研究を続けています。

SiC