欠陥評価

SiC結晶のならず者は 高温での動きをX線で探れ!

原子や分子が正しく並んでいるものを「結晶」と呼びますが、世界のエネルギー事情を左右する半導体の世界では、結晶が正しく並んでいない部分は‟欠陥(ならず者)“となりす。新材料として開発の進むSiC結晶にとって、内部に存在する欠陥はデバイス動作に悪影響を及ぼすからです。
宇治原研究室では、X線を用いることで結晶欠陥の高温での挙動をリアルタイムに観察する手法を構築しました。欠陥形成のメカニズム解明することにより、高品質SiC結晶の実現が期待されます。

1.研究の背景

次世代の超高速通信が実現する5G※の社会では、エアコンや鉄道車両システムなどの動力部分の要である、パワーデバイス部分でのエネルギーの低損失・高効率・小型化は最重要課題です。現在主に使用されているSi(ケイ素)では、エネルギーのロスが大きい上に、多くのエネルギーロスが集中することで発熱量も大きくなるため、壊れてしまう可能性も高まります。Siに代わる材料として、SiC(炭化ケイ素)に大きな期待が高まっています。
SiCは黒色のセラミックスで、地球上ではダイヤモンド、炭化ホウ素に次いで3番目に硬い、Si(ケイ素)とC(炭素)の化合物です。また、SiCはとても熱伝導率が高く(即ち、エネルギーのロスが少ない)、熱による体積の変化が少ない為、熱による衝撃にはとても高い耐性を持っています。

※5G=(5th Generation)通信システム(インフラ)と携帯端末の両方を、根幹からそっくり入れ替え、大幅な通信速度向上を実現する節目とその仕組みを“世代”(Generation)と呼んでいます。現在日本で主流なのは第四世代、いわゆる「4G」ですが、IoT社会が進み、自動運転や遠隔手術、8K映像の伝送などなど、「遅れることなく、正確に、同時に多数、大容量の情報を伝達する」ことを可能にする、2020年の開始を目指している通信システムのこと。

2.結晶の欠陥を測定

宇治原研究室では、X線を用いることで、SiCの結晶欠陥の高温での挙動をリアルタイムに観察する手法を構築しました。欠陥とされる結晶の乱れが形成される際のメカニズムを解明することにより、高品質なSiC結晶の実現が期待されます。