ゴムやプラスチックが 熱をよく通す素材に変身!

我々は、極めて高い熱伝導率を持ち、かつ絶縁体である、繊維状の窒化アルミニウム(アルミニウムと窒素の化合物のセラミックス)、AlN*ウィスカー*の結晶成長技術を確立することにより、これを特定の樹脂に分散させて「高放熱性高周波基板」を製造する技術開発に成功しました。

*AlN=アルミニウムの窒化物であり、無色透明のセラミックス。化学的には非常に安定した物質であり、熱伝導率が高い。絶縁体。
*ウィスカー=金属表面を適当な温度と雰囲気に保つと非常に強く硬い細い結晶が伸び出すことがあり、これをひげ結晶(=ウィスカー)といいます。転位を含まない完全に近い結晶構造をもつと考えられています。

1.研究の背景

これからの社会は、5G(第5世代通信)*やIoT*ですべてのヒトがありとあらゆるモノとつながり、モノとモノがつながり、超高速通信、高集積化*が顕著になります。そこで重要視されているのは、高い放熱性です。
現在の情報社会(Society 4.0)では、人間が情報を解析することで価値が生まれてきました。これから来たるsociety 5.0 では、IoT(Internet of Things)ですべてのヒトが、ありとあらゆるモノとつながり、モノとモノがつながり、様々な知識や情報が共有されることになります。膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析し、その結果がロボットなどを通して、新たな価値が産業や人間社会にフィードバックされることになります。
すなわち、超高速通信、高集積化*が顕著になります。そこで問題になるのは「機器から発せられる熱」です。熱がこもると、コンピューターが遅くなり、電池の持ちも悪くなるからです。熱による損壊や異変を防ぐためには、高い放熱性を持つことが重要となります。

*5G=通信システム(インフラ)と携帯端末の両方を、根幹からそっくり入れ替え、大幅な通信速度向上を実現する節目とその仕組みを“世代”(Generation)と呼んでいます。現在日本で主流なのは第四世代、いわゆる「4G」ですが、IoT社会が進み、自動運転や遠隔手術、8K映像の伝送など、「遅れることなく、正確に、同時に多数、大容量の情報を伝達する」ことを可能にする、2020年の開始を目指している通信システムのこと。
*IoT=Internet of Thingsの略。直訳すれば「物のインターネット」となりますが、パソコン類以外の「物」が、センサーと通信機能を持ってインターネットにつながること。それにより、人間が遠く離れた「物」の様子を知ることが可能になり、さらに「物」をコントロールすることにより、より安全で快適な生活が可能になります。
*高集積化=狭い場所に集中すること。半導体は、個別半導体から集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)へと、微細化とともに集積度を向上(高集積化)させており、電子機器の機能がどんどんLSIの中に集積されるようになった今では、約1cm角のチップ上に集積されているトランジスタの数は、優に1億個を超えます。

 

2.「高い放熱性を持つ高周波基板」を製造する技術開発に成功

我々は、この「蓄熱」問題から活路を見出す、極めて高い熱伝導率を持ち、かつ絶縁体である高周波通信機器用、すなわち無線通信機器に適する基板材料を、AlNウィスカーの結晶成長技術を確立することにより、これを特定の樹脂に分散させて製造する技術の開発に成功しました。
主に、パワーデバイスなどの高い熱を発するところで、基板との絶縁と漏電しないための絶縁層として使用します。

 

3.社会実装も可能

いち早く社会に届けるため、名古屋大学発のベンチャー(U-MaP)を通じた特許取得と商品開発を並行して行っています。

 

《参考》

5G(第5世代)通信やIoTで重要な、高い放熱性を発揮するAlNウイスカー